毎日の図書館学

初めて図書館学に触れる学部1年生を想定して図書館に関係ありそうな本を毎日1冊ずつ300字程度で紹介します。

ビブリオバトルの話

ブログの連載テーマをビブリオバトルに変更して以下のサイトに引越しました。 hiroyukiokano.theletter.jp

百科全書

「願わくは、後世の人々が私たちの『辞典』を開いて、「これが当時の学問と芸術の状態であったのだな。」 といってくれますように! 願わくは、後世の人々が、私たちによって記録された発見に自分たちの発見をつけ加え、人間精神とその産物との歴史が最も遠…

世界の紙を巡る旅

身近にあるものだけれども知れば知るほどにさまざまな種類があることに気がつく。紙はその土地ごとにいろいろな表情をしている。手触りとか質感とか。ざらっとしていたりさらっとしていたり。原材料とか技法とか。厚くて薄くて。硬くて柔らかくて。色も明る…

かくれた次元

「有益な、好ましい古い建物とその周辺を都市改造の「爆弾」から守ること。新しければすべてよく、古ければみな悪いとは限らないからだ。われわれの都市には保存に値する場所──時には二、三軒あるいは一群の家だけのこともある──が多くある。それは過去との…

遊びと学びのメディア史

「明治開化期において、木版刷りの印刷物である錦絵は、印刷技術が発達していない日本社会における重要な情報メディアであった。このような状況のなかで、教育政策においても教育的意図を伝えるメディアとして錦絵の有効性が注目され、文部省は教育錦絵と呼…

時間

「基本的に、人間がコンピュータに期待しているのは──書くこと、情報の入手、コミュニケーション、さまざまな娯楽コンテンツにまで──即座の反応である。特定の情報が欲しければ、瞬時にアクセスできることを私たちは期待する。ある音楽が聞きたいと思えば、…

発明

「現代科学の大問題の一つは、出版物の大量化そのものである。既存の出版物の目録を指で爪ぐるだけでも大変な量になり、単にその多さのゆえに圧倒的になった。その結果、マイクロフィルム法によって蔵書を圧縮するだけでなく、文献の検索と目録作成のための…

世界の「住所」の物語

「国家は国を形成して政策を進める前に、その社会を把握し、国民の身元を確認しなければならなかった。家屋番号がつけられるまで、閉ざされた家々と地図整備されていない通りは、そこに住む人々を隠していたのだ。対象が本なら、わたしたちはそこに書かれた…

物語の哲学

「人間の経験は、一方では身体的習慣や儀式として伝承され、また他方では「物語」として蓄積され語り伝えられる。人間が「物語る動物」であるということは、それが無慈悲な時間の流れを「物語る」ことによってせき止め、記憶と歴史(共同体の記憶)の厚みの…

ベンチの足

「問題化する、そして外に引っ張り出すということは、どういうことであろうか。それは、言語化する、視覚化する、ということに他ならない。一旦、言語化あるいは視覚化したものなら、他人にも扱えるものとして外在化するのである。では、どうしたら外在化で…

私の絵本ろん

「絵本づくりも、編集者、作家、画家、印刷所、製本と、一冊の本は共同制作だと思う。したがって私のやり方は、与えられた作品のねらいは何か──というところからはじまる。そして作家と話し合う。それで自分なりの視覚的な解釈をもつ。その解釈にもとづいて…

知はいかにして「再発明」されたか

「大思想にしろちょっとした考えにしろ、およそ人間が考えたことは、なんらかの制度によって組織化されてはじめて影響力を持つ。しかも強力な思考のなかには、誰がどこでどのように知を追求し、その達成をどう評価するかといった、人々の知の探求方法を再構…

「モノと女」の戦後史

過去に「主婦の生活に潤いを」「洗濯しながら本が読める」「主婦の読書時間はどうしてつくるか」といった広告のコピーがあった。1948年から1950年頃の洗濯機の広告に登場する。当時の電気洗濯機はあまりにも高価であり、売る側にも買う側にも「なぜ電気洗濯…

日常的実践のポイエティーク

「読むという活動は、ページを横切って迂回しながら漂流をする。テクストを変貌させつつ、その歪んだ像をつくりだす目の旅だ。何かふとした語に出会うと想像の空を駆け、瞑想の空を駆ける。軍隊さながら活字が整列している本の表面でひょいと空間をまたぎこ…

視覚障害教育の源流をたどる

視覚障害者が点字によって文字を読む。では点字が発明される前はどういう方法で文字を読むことができたのだろうか。その方法をどうやってつくり出しただろうか。視覚障害教育のための学校がつくられる。読み書きをするための道具、算木・算盤などの数を計る…

健康的で清潔で、道徳的な秩序ある社会の不自由さについて

「かつてないほど清潔で、健康で、不道徳の少ない秩序が実現したなかで、その清潔や健康や道徳に私たちは囚われるようにもなった。昭和時代の人々が気にも留めなかったことにまで私たちは神経をつかうようになり、羞恥心や罪悪感、劣等感を覚えるようにもな…

書物と製本術

「書物を読む読者は増加したとはいえ、十七、十八世紀において趣向を凝らした革装を持つことができるのは、社会的身分のある裕福な人びとであった。貴族の間でも経済的格差があり、金箔押しのデザインを含めて装幀の質はさまざまであったが、本は書物を読む…

人物図書館

「図書館は人を育む場でありながら、私は人を知ろうとしなかった。働くとは交わる事である。しかし日々同じ言葉で語り、同じものを見ているのに意志が通じない。それは私が見ているものとあなたが見ているものが、実は違うのではないか。ものの見方が違う。…

レトリック感覚

「「いま私はバルザックを読んでいる」という文章は、全然レトリカルな感じがしない、ごく常識的な表現だが、そこにも換喩が働いている。「バルザック」は人名であり、人間である。しかし、私はいま人間を読んでいるのではなく、また人間の顔色を読んでいる…

教師のためのからだとことば考

図書館にはたくさんのことばが溢れている。ことばはわたしたちのからだから発している。からだを通して図書館を考える。「「ことば」は、内から発して他者に向かう「行動」です」「多くの人はいわゆる口先だけの声でしか語っていない、からだ全体で語ってい…

レポートの組み立て方

「他人に読んでもらう文書はすべて、A 誰がこれを読むのか。B 自分が書くことについて、その読み手はどれだけの予備知識があるだろうか。C その読み手はどういう目的で、何を期待してこれを読むのだろうか。D その読み手が真っ先に知りたいのは何だろうか。…

専門知と公共性

研究者の知的生産活動の意義を問うてみる。専門誌の編集・投稿・査読活動を行うコミュニティを「ジャーナル共同体」と呼ぶ。その重要性は4つある。(1)科学者の業績は専門誌に印刷され、公刊(publish)されることで評価される。(2)科学者によって生産さ…

美人論

「知性美」という言葉がある。美しさが知性と絡められた言説がある。「美しさという点だけからも教養が心の養いとして重要であります」「いくら美人でチャーミングでも、頭がよくなければブスにしか見えない」「やはり、賢い女は美しい」「私は、デパートを…

性表現規制の文化史

「人々はいつも「自分は悪徳に触れても平気だが、他の人は自分より道徳的・規範的に劣っており、悪い影響を持つと懸念されるものを規制して、他の人々を悪徳からほ保護すべきだ」と考えがちなのでしょう。そして彼らは、「他者も自分と同じ程度の道徳的・規…

アメリカ教育使節団報告書

「税金によって支持される公立図書館も、思想の普及を計るもう一つの機関である。公立図書館は階級、財産、信条の障壁を認めない。利用したい者はだれもが利用できる。さらに、その書架および閲覧室には、論争的問題についてのあらゆる角度からの議論が並べ…

街並みの美学

「詩人はつねに小さなもののなかに大きなものをよみとろうと身がまえている」「大きな空間には、大きな空間にしか存在しない価値があるが、一方、小さな空間──狭い空間ではない──にもはかりしれない魅力が存在するのである」「都市は、本来、コミュニティー…

十二世紀のルネサンス

「十二世紀の精神を研究する際に、いつも念頭においておかなければいけないのは、当時どんな本が入手でき、その本がどんな状況で作られ読まれたかということである。できれば、それぞれの著者について、その引用、旅行、読むことのできた本をもとに、知的背…

1950年代

日本の戦後の歴史の記録。1949年までの資料はプランゲ文庫に収まっている。「1968年」や安保闘争への注目から1960年代も注目されている。しかし、その間に位置する1950年代は「図書館での資料整備も十分でなく、プランゲ文庫のような大きなアーカイブは望み…

印刷に恋して

「日本語組版というものは、ものすごく面倒な手続きが必要だ。平仮名、カタカナに加えて漢字という厄介なものがある。同じ字でも、正字、新字、簡体字、異体字とバリエーションがある。さらに欧文も入ることがある。縦組みの和文の中に欧文が横組みで入って…

図書館の興亡

「書架のあいだにいると、図書館は死んだ本が行く場所であるかのように思えるかもしれない。総体的に見ると、書物はそれ自体がつくったすばらしい隠れ家に姿をひそめている。時代が移るにつれて、図書館は成長したり変化したり、繁栄したり消滅したり、花盛…