毎日の図書館学

初めて図書館学に触れる学部1年生を想定して図書館に関係ありそうな本を毎日1冊ずつ300字程度で紹介します。

ボン書店の幻

「なぜ書物というものは著者だけの遺産としてしか残されないのだろう。幻の出版社といえば聞こえはいいが、実は本を作った人間のことなどこの国の「文学史」は端から覚えていないのではないか。とすれば、なんとも情けない話だ」。出版という活動は文章を記録に残して世の中に流通させるための器を作り上げるための行為ではない。著者一人だけのものではない。本にはそれを世に出してきた出版人が込めた思いが含まれる。鳥羽茂はボン書店という小さな出版社の活動を通じて何を見て何を残してきたのか。この本は単行本としての出版後に新たな展開へとつながったため、ぜひ「長いあとがき」が収録された文庫版で読んでほしい。

calil.jp