シャボテン幻想
「人間は、──この地上に新しく現れた不思議な生きものは、じつは、動物やその他の生物とちがって、その一人でもが、この世に生きて、たれて、死んだあと、何ものも遺さない、ということはない。どこかの陋巷の、どんな身寄りのない貧しい老人でも、生きて働いて何かをしたその痕跡は、なにかの部分となって、必ず残っているはずだし、裸で生きて死んだわけではないから、誰かがその形見分けの恩恵を受けるだろうぐらいの、ささやかな遺品を残すだろう」「人間は一人々々、生きている間に、地球に何かのプラスを残してゆく」。人が生きた痕跡は必ず残る。何かが残る。残ったものを体系的に残す仕組みも必要だ。残るものを残す。