毎日の図書館学

初めて図書館学に触れる学部1年生を想定して図書館に関係ありそうな本を毎日1冊ずつ300字程度で紹介します。

2020-10-01から1ヶ月間の記事一覧

ボン書店の幻

「なぜ書物というものは著者だけの遺産としてしか残されないのだろう。幻の出版社といえば聞こえはいいが、実は本を作った人間のことなどこの国の「文学史」は端から覚えていないのではないか。とすれば、なんとも情けない話だ」。出版という活動は文章を記…

読むことの風

「ことばが見つからない どれだけ、自分の内側を見つめても ことばが見つからない どれだけ、周囲の声に耳を傾けても ことばが見つからない さびしさに震える でも読むことの風は ことばの外から ほら、もうここに届いている」。編集者アサノタカオさんの随…

書物を焼くの記

「この本は問題になるだろうか」「この雑誌は、のこしておいてもさしつかえなかろうか」「けっきょく、なにをのこしておいてよく、なにをのこしておいてはいけないんだろうか」「やさがしをやられたら、なにかあとで、めんどうなことでもあるのだろうか」。…

図書館を遊ぶ

図書館にはさまざまな取り組みができる。単なる読書空間という枠には収まらない。とはいえ、そのためには図書館がそういった多様な活動をするための場所として認識されている必要があるし、そういう建物としてつくられていなければならない。そこで図書館サ…

本が崩れる

「本は、なぜ増えるのか。買うからである。処分しないからである。したがって、置き場所がなくなる。あとで後悔すると知りつつ、それでも雑誌は棄てる。大半は役に立たぬと知りつつ、単行本を残してしまう。役に立たぬという保証はないからだ。仕事をするか…

空間〈機能から様相へ〉

「空間を形成する行為は、なにも建築や庭をつくるという行為に限らず、私たちの日常生活のあらゆる局面でなされているということである。私たちは、空間的にしか存在しえない。したがって、空間的伝統は、人々の行為のあらゆる局面にかいま見られる傾向であ…

異文化としての子ども

「子どもを語ることは、人と世界を、とりわけ、現代を語ることなのだ」「子どもを語るのは、いつも大人であって、子どもは子どもを語らない。そして何よりも、永遠の子どもは現実には存在しない。そこに子ども論のどうしようもない不可能性がある」。子ども…

戦後10年 東京の下町

焼け跡のバラック。東京大空襲の傷跡。不発の焼夷弾。防空壕の跡。イモとすいとん。毎晩のような停電。夜鍋。手作りラジオ。ツギハギとお古とお下がり。日本橋の百貨店。木製のエスカレーター。ストーブと温かい弁当箱。湯川秀樹のノーベル賞。都電と国電。…

語る歴史、聞く歴史

本を読むことの歴史を研究する分野がある。本はどこからどのように読み手のもとにたどりつたのかなど、読書や読者の歴史を考える学問である。その一方で、誰かが語る歴史や誰かの話を聞く歴史というものもある。活字になる前の誰かが語る言葉も本の一種であ…

科学の社会史

科学というものの存在を当たり前のように感じている。科学者がいて科学が研究される。大学があって科学が講じられている。科学は私たちの身近にあるように見える。けれどもそれら科学というものはいつ頃に誕生したのだろうか。あるいは大学や学会という組織…

詩・ことば・人間

「自分が言葉を所有している、と考えるから、われわれは言葉から締め出されてしまうのだ。そうではなくて、人間は言葉に所有されているのだと考えた方が、事態に忠実な、現実的な考え方なのである。人間は、常住言葉に所有されているからこそ、事物を見てた…

ウンコはどこから来て、どこへ行くのか

「青木まりこ現象」という言葉がある。書店や図書館のような本のある空間には不思議な力があるのだ。人は図書館を訪れるとついウンコをしたくなってしまう。居心地のいい図書館とは安心してウンコができる図書館のことだ。図書館の機能について考えるならば…

文化は人を窒息させる

「彼らはうまく書くこと以外に価値のある思想はないと無邪気にも確信し、図書館で検索すれば過去に考えられたことのすべてを手にすることができると信じている。どんな領域でも検索すればわかるという単純な思い込みが文化人の典型的性格である」「彼らの頭…

カフェと日本人

本を読むにはコーヒーと落ち着ける空間があるといい。カフェは本を読むにも本を書くにもちょうどいい。日本の文学作家や芸術家たちもカフェでコーヒーを楽しみ、語らい合っていた。創作がカフェで行われていた。コーヒーを日本に持ち込むこと、社会のなかに…

学術書を読む

大学に入ると学術書や学術論文を読むようになる。新しい知見を生み出すのは膨大な数の学問の蓄積のお陰である。しかし現在の大学は教養教育の制度がなくなって専門志向が強まっていることと、本の出版をめぐる状況が以前とは大きく変わってしまい、出版点数…

コンヴィヴィアリティのための道具

「アルファベットと印刷機は原則として、記録された言葉を専門家の手から解放してきた。商人はアルファベットを用いて、象形文字に対する神官の独占を打ち破った。廉価な紙と鉛筆、のちにはタイプライターとコピー機といったふうに、原則として一組の新しい…

情報の文明学

情報とは何か。情報産業とは何か。情報経済とは何か。私たちの暮らしにあふれているさまざまな情報を大局的な視点から眺めてみる。私たちの日々の生活と情報とが混じり合うところはたくさんあるようだ。人と人とのコミュニケーション、マスメディア、教育、…

読書術

効果的に効率的に読書をするには技術がいる。どんな本を読んだらいいのかについては一般化することはできないけれども、どういう風に本を読んだらいいのかは一般化して語ることができそうだ。「読書はまた愛の行為に似ています。社会の全体から切り離されて…

たいした問題じゃないが

「多数の日記は、胸躍るような経験に乏しいので、内面の冒険を書き記すことになる」「日記をつけるあらゆる人の心には、自分の日記がいずれ公表されたという願望があるのは勿論である。いつか未来の世代に発見され、二十世紀人は素朴なことしかしていなかっ…

ページと力

「デザインを定義するならば、大量生産されるものに視覚的な秩序を与える作業、と考えてよいだろう。視覚的な秩序は、情報を公開する技術に裏打ちされていなければならない」「情報を公開する技術に携わっているのはデザイナーだけではない。編集者がその代…

ものがたりの余白

「どうなるかすでにわかっている冒険は、本当の冒険じゃないでしょう。それならどこかの旅行者がアレンジする冒険セット旅行だ。本当の冒険は、そんな力が自分のなかにあるとはそれまでまるで知らなかった、そのような力を投入しなければならない状況へ人を…

情報生産者になる

誰かに自分の考えを伝えようとする。論文という形でアウトプットをしてみる。そのためには問いを立てて言いたいことを整理しておかないといけない。どういう順番で説明すれば説得力が増すだろうか。そして誰かと議論をするためにはあらかじめ準備も必要だ。…

ピダハン

「文化は、観察者である研究者だけでなく、対象となる人々にも作用する。人間言語の理論を理解するには、文化が対象そのものに及ぼしている力だけでなく、理論の組み立てにも影響を与えていることを意識する必要があるのだ」「わたしたちはたいてい、自分た…

脇道にそれる

「いつどこで生まれたかを私は知らない。私が生まれたのを目撃した親が役所に届けを出し、それが文書になった。私の存在の証明は、他者の記憶とその記述という行為に根本的に委ねられている。私の存在証明を突き詰めていくと、生きていることの証とは、文字…

学問の力

「学問とは、さまざまな観察の結果でてきた知識というより、そのような知識を抽出しようとする態度や関心そのものだからなのです」「人文・社会科学系の場合、ただ知識を獲得することではなく、社会のなかで生きてゆくことを前提として、自己や人間や社会や…

この星の忘れられない本屋の話

「本を借りることこそできないけれど、本屋のことはいまでも身近な図書館だと思っている」「本屋とは常に、珍しいものがいっぱい詰まった玉手箱であり、タイムマシンであり、少しばかり恥ずかしい思いをする場所だった」「本屋は、はぐれ者や流れ者を惹きつ…

ジャズ喫茶論

「「レコード」というモノは、以前に行われた(生)演奏の〈記録〉であり、その意味で常に〈過去〉に結びついていると考えられる」「レコードを聴く場合は演奏者がその場に不在のため──それこそ亡くなっていても、演奏時代に何の影響もない──「演奏を見る」…

暇と退屈の倫理学

「私たちの生活がすべて気晴らしであるわけではないだろう。しかし、私たちの生活は気晴らしに満ちている」「暇つぶしと退屈の絡み合った何か──生きることとはほとんど、それに際すること、それに臨み続けることではないだろうか」。暇な状態でいるのは嫌な…

お砂糖とスパイスと爆発的な何か

本を読むというのは個人的な行為である。ひとり静かに本のページをめくって書かれたことを頭に入れていく。それでも本を読むという行為がほかの人と共有化されることがある。読書会というのはそういう個人的な読書体験を相互に紹介し合う場所であり、貴重な…

家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった

好きな自分というのは他人との関係からできている。「好きな自分でいられる人との関係性だけを、大切にしていく」「自分によい影響を与える人の存在は、自分で選ぶことができる」。そういう風に好きな自分になることを選択しながら生きていきたい。風が吹け…