毎日の図書館学

初めて図書館学に触れる学部1年生を想定して図書館に関係ありそうな本を毎日1冊ずつ300字程度で紹介します。

2020-09-01から1ヶ月間の記事一覧

装丁物語

本の装丁を眺めるのは楽しい。装丁家は本の見た目や手触りや質感を考えて本をつくっている。読み手として本を手に取るときにすばらしい装丁の本に出会うことはとても嬉しい。本の装丁をするといってもいろんな話がある。そもそもどうして装丁家になったのか…

子どもたちに語るヨーロッパ史

ヨーロッパの歴史を考えてみる。活版印刷術が発明される。大学や学校がつくられる。都市や国家が誕生する。ルネサンスや産業革命が起こる。近代の学問が発達する。キリスト教が広がり、大聖堂が建設される。十字軍がヨーロッパ史に残したものは何だろう。騎…

本と体

本を読む。食べるように本を読む。体が本を欲している。体は本でできている。本は読むものだ。本はどこででも出会える。本とはいつでもさよならできる。読みたい本にはまたどこかで会える。本との付き合い方はとても自由だ。本を読む人の話を聞きたい。本を…

書物愛 蔵書票の世界

自分の所有する本にそれが自分の本だということがわかるような印をつけたい。はんこ形式の蔵書印もあるが、本の見返しに一枚の紙を貼る蔵書票という形態もある。ラテン語でエクス・リブリス(Ex Libris)と呼ばれる。小さな紙にオリジナルの絵柄が施される。…

私とは何か

「自分は、分人の集合体として存在している。それらは、すべて他者との出会いの産物であり、コミュニケーションの結果である」「分人が他者との相互作用によって生じる人格である以上、ネガティヴな分人は、半分は相手のせいである」「裏返せば、ポジティヴ…

喫茶の一族

喫茶店からはさまざまな文化が生まれてくる。文学だったり音楽だったり。人が集ったりお喋りしたり。日記を書いたり本を読んだり。新たな出会いがあったり。運命の出会いがあったり。気分転換に一人で過ごしたりする。コーヒーを飲むためにお店を訪れている…

記憶の箱舟

読書と記憶について考える。今日のインターネットは私たちの記憶の負担を軽減しているが、インターネットの出現以前にも記憶に関する革新的なできごとが三つあった。文字の創案、印刷術の発明、索引の発明である。東洋・西洋の読書法がどのように変わってき…

ラインズ

「歩くこと、織ること、観察すること、歌うこと、物語ること、描くこと、書くこと。これらに共通しているのは何か? それはこうしたすべてが何らかのラインに沿って進行するということである」。私たち人間が日常的な活動を行う際のあらゆる場面にライン(線…

「本読み」の民俗誌

昔話などが伝わっていく過程には「誰かが誰かにその物語を語って聞かせる」という行為が見られる。口から耳へと伝わっていく口承による伝達がある。ホンヨミ(本読み)という言葉には複数の意味があるらしい。一つには「読書という行為」そのものを指す意味…

物語を売る小さな本屋の物語

子どもの本を売る仕事がある。子どもの本専門店・メリーゴーランド京都。三重県四日市市の本店での勤務を経て京都でお店を構えた鈴木さんの物語。子どもの本の専門店として本屋を開業し、その経営を維持していくのは本の利益率を考えるととても大変なことだ…

パラダイムと科学革命の歴史

科学が発展していく構造を見ていくとパラダイムという考え方が出てくる。専門家集団に問い方・解き方のモデルを示す科学的業績で、後継者たちがその学問を発展させる出発点にもなっている。それまでの科学では説明できない現象が現れたときに、新しいパラダ…

研究不正

学術の世界では研究成果を論文として公にする。正当な手続きで研究が行われ論文として発表されていれば問題ないが、ときに科学者たちは捏造・改竄・盗用といった不適切な形で研究発表を行ってしまう。一度公になってしまった論文の不正を明らかにし、研究不…

本を読めなくなった人のための読書論

「本を読まない」ことと「本を読めない」ことは似ているようで違っている。あなたが本を読めなくなったと思ったならば、それはどうしてそうなってしまったんだろう。今は本を読むときではないのかもしれない。無理矢理に読もうとしてもきっと読めない。文字…

HAB本と流通

本の流通の仕組みを知る。取次という流通の仕組みを知る。本がつくられて私たちの手元に届くようになるまでの過程を探っていく。本の流通経路は多様であり、本の届け方も多様である。あなたが当たり前のように手に取っているその本が、あなたの手元に収まっ…

詭弁論理学

議論をするなかで相手を言い負かすことがある。それがまっとうな議論になることもあれば、論理が破綻しているにもかかわらず言い負かされることもある。納得できないけれども、それでも無理矢理に言いくるめられてしまう。それは議論に勝つということもあれ…

「今、ここ」から考える社会学

私たちは日常的に他者と出会い、他者と共に生きている。私という存在について考えようとするならば、他者の存在について考えないといけない。他者の存在を通して自分を理解していく。私たちの行為や人と人との関係性、社会の構造など、私たちが日々の暮らし…

小さな建築

強くて大きくて頑丈なようにつくられたものは目立つし頼りにもなる。つい大きなものを目指したくなってしまう。それとは反対の方向に向かってみる。小さい単位でものごとを考えてみる。いかにして新しい手法を見出していくかを問いかけてみる。たとえばレン…

人はなぜ物語を求めるのか

誰かの物語を読む。それは楽しいことだ。その物語をきっかけとしていろんなことを考えることもできる。そして自分自身の物語には希望もあるし絶望もある。良いこともあるし嫌なこともある。楽しいこともあるし苦しいこともある。自分が生きているさまざまな…

紙の本は、滅びない

紙の本を意義を問いたい。こういう風な問いかけが出てくるのはデジタル形式の本と比べられるようになったからだ。電子書籍と比べて紙の優位性ってなんだろうか。紙の魅力ってなんだろうか。紙の本を読者に届けたいと思うならば、電子書籍が紙の本よりも優れ…

分類学からの出発

図書館では分類法をつかって本の分類を行っている。一般に0から9までの10種類の記号を用いて分類番号がつけられ、本がテーマ別に書架に並べられる。この作業によって本を効率的に探すことができる。そのためにあらかじめ体系化された分類表をつくっておく。…

大学教育について

図書館は教育機関である。公共図書館は社会教育、学校図書館や大学図書館は学校教育のなかに位置づけられる。大学教育に話を限ってみても、その理念はどういうものなのかが繰り返し問われることになる。教育とは何なのかという問いについて、何度も考えない…

配色の教科書

まえがきにレオナルド・ダ・ヴィンチの言葉が引かれている。「色彩はただ美という驚異をつくり出すばかりである。それは画家の力ではない。その美を生む色彩がそれである」。色同士が互いに引き立て合うことを大切に「色彩調和」と呼ぶ。「調和とは秩序であ…

ハンドブック

本は人に読まれるようとしている。人は本を読みたがっている。本に手を伸ばしたくなる。本は人を求め、人も本を求める。それならばその二つがつながるような試みが必要だ。本をどうやって選ぶのか。魅力ある本棚はどうやって作るのか。本はどこでどうやって…

素読のすすめ

言葉が現在のような形でつかわれるようになるまで、古典はどのように読み書きされていたのかを知りたい。本が現在のような形になる前にはどういう姿をしていたのだろう。今とは違った読み方や書かれ方だったのだろう。日本ならば和本での読み書きがあったし…

勉強の哲学

勉強とはそれまでの自分を変えるもの(自己破壊)である。深く勉強することで言語偏重の人(その場にいながもノリの悪い浮いた語りをする人)になっていくものである。知識を獲得することが勉強の目的なのではなく、これまでバカをしていた自分を喪失するこ…

カフェから時代は創られる

カフェという空間はお客が座る場所を確保して休憩し、お茶やコーヒーを飲む場所である。だがそれ以上にカフェには重要な機能が備わっている。芸術家たちが集い、一人で創作に励む場所であり、友人と出会って議論をしたりする場所である。創造的行為を促す空…

本のリストの本

本にはタイトルがある。タイトルはその本の中身を言い表している。その本がどういう本なのかはタイトルを見れば判断できるようになっている。でも本は何冊か集めてみると違った意味を持つようになる。その本のリストに共通するテーマはいったい何だろうか。…

レポートの組み立て方

大学に入学したらレポートをたくさん書くことになる。大学を卒業してからもいろんな場面でレポートを書くことになる。早いうちからレポートの書き方を身に着けたい。事実と意見の違いとはなんだろう。引用するための文献はどうやって集めればいいのか。文章…

#リパブリック

私たちは自分が見たいものを見ている。そして見たくないものが見えづらくもなっている。今日の情報環境下で私たちは「インフォメーションコクーン」(情報の繭)に包み込まれている。ハッシュタグは私たちを分極化している。個人としては心地良くて快適な状…

パトリックと本を読む

「そう、結局はこんなにも簡単なことなのかもしれない。ある人に本を一冊渡す。その人がそれを読み、心を動かされる。ある段階を越えたら、あなたはただの本を運ぶ人になる。相手と本とをつなぐパイプ役でしかなくなるのだ」。本を読むことで人は自分とは異…