毎日の図書館学

初めて図書館学に触れる学部1年生を想定して図書館に関係ありそうな本を毎日1冊ずつ300字程度で紹介します。

2020-11-01から1ヶ月間の記事一覧

測りすぎ

何かについて測ることは正しいように見える。測れるのは良いことだと思ってしまう。でも測ることで常に正しい結果へ導かれるわけではない。ときには誤った方向に話が進んでしまう。そもそも測定基準も疑わないといけない。情報は簡単に歪曲される。たとえば…

書物のある風景

「小金があれば、わたしは書物を買う、金が残れば、食料と衣類を買う」本は何冊でも欲しいです。「紙は燃えるが、言葉は自由に羽ばたく」言葉は距離を越え遥か遠くの私のもとへ。「一冊の本しか知らぬ者には用心せよ」どうか用心されない人に。「本を売ると…

幻獣の話

「一篇の詩にまじりこんだ一つの比喩のなかに、ヨーロッパの文学遺産といったものがかいま見えないだろうか。古典ギリシアに生まれ、ホメロスを経由して、微妙に姿を変えながら故事伝承となり、あるいは絵画の主題となった。それについてはことさら学ぶまで…

へろへろ

「ああもうわかった!もう誰にもたのみゃせん!自分たちでその場ちゅうやつを作ったらよかっちゃろうもん!」「制度があるからやるのではない。施設が作りたいからやるのではない。思いがあるからやるのではない。夢を実現したいからやるのではない。目の前…

新・装幀談義

「読書という行為は、良きにつけ悪しきにつけ、ひとりの人の心をつくっていく、あるいは鍛えていく道具だと思います。直接体験する家庭や社会。間接的な目や耳の体験としてのテレビや映画、オーディオ。読者はそれらの体験や情報を主体化する、心をつくる道…

江戸の大普請

江戸のまちは徳川幕府が開かれたことで大きく変貌する。日本橋の周辺から眺めてみる。橋からは蔵(豊穣)・江戸城(平和)・富士山(不老不死)が見える。そしてその遥か向こうに京都(太古)がある。風水の関係でお城周辺の重要な拠点が決まる。京都のまち…

エセー抄

「注釈というものが疑問や無知をふやすということがよくいわれる。というのも、人間に関する書物であれ、神にかかわる書物であれ、多くの人々が熱心に取り組んだからといって、その解釈によって難解さが解消されたようなものはないのだ」。モンテーニュは多…

教育とは何かを問いつづけて

「実際私たちは偏見のかたまりなのだ。自分を基準にしてものを考え、一つの世界をかたちづくっているけれど、これはなかなかこわれにくい。強力な偏見のはぎとりなしには、自分が見えず、他人も見えない」「真理は私たちの偏見をはぎとり、私たちを個性的で…

自由からの逃走

「事実についての知識のない思考は、空虚で架空である。しかし「情報」だけでは、情報のないのと同じように、思考にとっては障害となる」「近代人はかれがよしと考えるままに、行為し、考えることをさまたげる外的な束縛から自由になった。かれは、もし自分…

言説の領界

「真理への意思は、認識すべき諸対象の見取図の歴史、認識する主体の機能および位置の歴史、認識の物質的、技術的、道具的充当の歴史を、自分自身に固有のものとして持っているかのようである」「この意志は、教育はもちろんのこと、書物や出版や図書館のシ…

ブルースだってただの唄

「集団の歴史をひとりひとりその身に負いながら、女たちは自らの生をいかに名づけるのだろうか。それは世界のどこにいても、女たちのこころを離れない問いでもあるだろう。女たちは体験を語るにふさわしいことばを求めつつ、こころをひらく。できあいのこと…

解放されたゴーレム

「ゴーレム科学・技術は専門家からなっており、専門家は尊敬されるべきである。しかし、その専門性が何を構成しているのか、また何に対して適用できるのか、ということについて、何の理解もないままに、ただ専門性だから無条件に尊敬する、というわけにはい…

地名の楽しみ

地名にはさまざまな由来がある。地形に由来するもの、人々の生活に由来するもの、駅名に由来するものなど、どこからその名称が出てきたのかをたどってみる。東西南北の漢字を加えることにより、他所の地名と区別する方法もある。中央という地名はなぜつかわ…

今こそ読みたい児童文学100

「子どもというのは基本的に真剣で、真面目で誠実な人たちなので、読んでいて大人がハッと胸を突かれるようなものが子どもの本のなかにはたくさんあり、その生真面目さは時には非常に崇高で気高い文学を生み出しました。人は自分が今悩んだり、考えているこ…

図書館の誕生

まちに新しい図書館ができる。新しい図書館のあり方を世の中に示す。それが日本の図書館政策に大きな影響を及ぼしていく。日野市立図書館の名前は司書課程のテキストで繰り返し出てくる。移動図書館ひまわり号からの出発や『中小都市における公共図書館の運…

就職しないで生きるには

「わたしがまだ二十代で、一九六〇年代を炎のようにすごし、明日なんてないという気になっていたころ、仕事というのは憎悪すべき単語だった。わたしは終日遊びまわり、自由を求めて暮らしたがっていた。だがわたしたちはいま一九八〇年代に突入する。わたし…

実践 自分で調べる技術

生きていく上で私たちはいろんなことを調べる。生活や仕事のことなど。必要に迫られて調べることもあれば、特に目的もなく調べ始めてしまうこともある。調べるにはいろいろな方法がある。図書館で調べるというのはもっともわかりやすい方法だ。雑誌記事や新…

わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる

まずは本と出会わないことには本を読むことができない。読んでおきたい本に出会いたい。私は私が読みたい本のことを知らない。私が何を読みたいのかを私は知りたい。どこに行けばどうすればそういう本に出会えるのだろうか。読むべき本の世界に入り込むため…

切りとれ、あの祈る手を

「いつかこの世界に変革をもたらす人間がやって来るだろう。その人間にも迷いの夜があろう。その夜に、ふと開いた本の一行の微かな助けによって、変革が可能になるかもしれない。その一夜の、その一冊の、その一行で、革命が可能になるかもしれない。ならば…

モノからモノが生まれる

「幼い頃に記憶した事柄は、その後もずっとその人の記憶に残る。ならば繰り返しの人間ではなく、クリエイティブな人間を、しなやかな考えを持ち、人生のなかで出くわすさまざまな問題を解決する精神を備えた人間を育成することも可能ではないだろうか?」「…

ローカルブックストアである

福岡の本屋・ブックスキューブリックのこと。お店を開いて本屋になるということ。さまざまなイベントを展開してみたり、カフェやパン屋を併設していく営業スタイルなど、小さい規模ながらも本を届けるための仕組みを考え続ける。そして福岡のまちで繰り広げ…

フランクリン自伝

「あるときわたしが、ぼくたちは論文を作成するときに、よく本を参照するが、そのときに、いつもみんなが会う場所に本がいっしょに置いてあったら、調べる場合にもずいぶん便利だと思う。だからみんなの持っている本を持ち寄って、共有の図書館を作ろうじゃ…

めぐりながれるものの人類学

「自分ではない誰かの生のために動くこと、世話すること、巻きこまれること。そこから生まれてくるつながると共同性。そうした事柄について、多くの人類学者たちが言葉を紡いできた。その共同性の真ん中にいるのは、たとえば子どもだったり、年老いた人だっ…

すこやかな服

「新しい服を纏った自分を見せたい人がいる。会いに行ってしまいたい! たった一着の服が、自分だけではなく見える世界さえも変えてしまうことを知っている。くるくると回ってダンスするように」「自分から溢れ出る高揚感は、日常を揺らす。日々は揺れて世界…

知識人とは何か

「現在の教育制度では、教育レヴェルが高くなればなるほど、そのぶん教育をうける者は、狭い知の領域に閉じこめられる。専門能力の養成をむだと考えることではない。問題なのは、専門能力が、直接的な関心事の外にあるものをみえなくさせ、一般的な教養を犠…

現代という時代の気質

「無為を余儀なくされた有能な人間の集団ほど爆発しやすいものはない。そのような集団は過激主義や不寛容の温床になりやすく、いかに不合理で邪悪であろうとも、壮大な行動を約束してくれるならどんなイデオロギー的改宗でも受け容れてしまいやすいのだ」「…

異本論

文献を読むということは読者の数だけさまざまな読み方が生まれるということでもある。時間が経つにつれて本は異なる形になっていく。異本が生じる。本というものは単に作者がいて文章を書けばそれで完成するわけではない。本が自分のところに伝わってくる。…

ナガサキ 消えたもう一つの「原爆ドーム」

戦後13年目に被爆遺構の浦上天主堂が取り壊される。原爆ドームが残された広島と遺構を残さなかった長崎の違い。その背景には何があったのかを辿っていく。アメリカの国立公文書館やセントポール市の図書館での丹念な調査で何が見つかったのだろうか。「古く…

議論入門

他者と議論を行う上で必要となる論法というものを解説している。そのなかの定義・類似・譬え・比較・因果関係の5つが取り上げられている。自分の考えをどのように相手に伝えるか。自分の主張したいことはどうすれば納得してもらえるのか。腑に落ちないくても…

ウォークス

「歩くということは外部に、つまり公共の空間にいることだ。歴史ある都市ではこの公共空間にも放棄と侵食が及んでいる。外出を不要にするテクノロジーやサービスによって忘れられ、不安感によって敬遠されている場所は数多い」。足取り、歩行、散歩者、脚、…