毎日の図書館学

初めて図書館学に触れる学部1年生を想定して図書館に関係ありそうな本を毎日1冊ずつ300字程度で紹介します。

2021-04-01から1ヶ月間の記事一覧

専門知と公共性

研究者の知的生産活動の意義を問うてみる。専門誌の編集・投稿・査読活動を行うコミュニティを「ジャーナル共同体」と呼ぶ。その重要性は4つある。(1)科学者の業績は専門誌に印刷され、公刊(publish)されることで評価される。(2)科学者によって生産さ…

美人論

「知性美」という言葉がある。美しさが知性と絡められた言説がある。「美しさという点だけからも教養が心の養いとして重要であります」「いくら美人でチャーミングでも、頭がよくなければブスにしか見えない」「やはり、賢い女は美しい」「私は、デパートを…

性表現規制の文化史

「人々はいつも「自分は悪徳に触れても平気だが、他の人は自分より道徳的・規範的に劣っており、悪い影響を持つと懸念されるものを規制して、他の人々を悪徳からほ保護すべきだ」と考えがちなのでしょう。そして彼らは、「他者も自分と同じ程度の道徳的・規…

アメリカ教育使節団報告書

「税金によって支持される公立図書館も、思想の普及を計るもう一つの機関である。公立図書館は階級、財産、信条の障壁を認めない。利用したい者はだれもが利用できる。さらに、その書架および閲覧室には、論争的問題についてのあらゆる角度からの議論が並べ…

街並みの美学

「詩人はつねに小さなもののなかに大きなものをよみとろうと身がまえている」「大きな空間には、大きな空間にしか存在しない価値があるが、一方、小さな空間──狭い空間ではない──にもはかりしれない魅力が存在するのである」「都市は、本来、コミュニティー…

十二世紀のルネサンス

「十二世紀の精神を研究する際に、いつも念頭においておかなければいけないのは、当時どんな本が入手でき、その本がどんな状況で作られ読まれたかということである。できれば、それぞれの著者について、その引用、旅行、読むことのできた本をもとに、知的背…

1950年代

日本の戦後の歴史の記録。1949年までの資料はプランゲ文庫に収まっている。「1968年」や安保闘争への注目から1960年代も注目されている。しかし、その間に位置する1950年代は「図書館での資料整備も十分でなく、プランゲ文庫のような大きなアーカイブは望み…

印刷に恋して

「日本語組版というものは、ものすごく面倒な手続きが必要だ。平仮名、カタカナに加えて漢字という厄介なものがある。同じ字でも、正字、新字、簡体字、異体字とバリエーションがある。さらに欧文も入ることがある。縦組みの和文の中に欧文が横組みで入って…

図書館の興亡

「書架のあいだにいると、図書館は死んだ本が行く場所であるかのように思えるかもしれない。総体的に見ると、書物はそれ自体がつくったすばらしい隠れ家に姿をひそめている。時代が移るにつれて、図書館は成長したり変化したり、繁栄したり消滅したり、花盛…

コーヒーが廻り世界史が廻る

「従来、ひとが会話する場所として思い浮かべられるものは、舞踏会場、劇場、公園、マチネー、夜会など、要するに上流社会の社交場である。これら古典的な場所に対して、コーヒー・ハウスの会話の特殊性は身分制の枠が取り払われている点にあった。身分の高…

鉄条網の世界史

「鉄条網の最大の機能は、空間の「遮断」である。それは政治的な分断にも威力を発揮してきた」「牛の群れを囲う機能が、人間に向けられるのは時間の問題だった。人間を拘束する刑務所、強制収容所、捕虜収容所、難民収容所などは、鉄条網抜きには存在しえな…

空間の経験

「道具と機械は、場所と広がりについての人間の感覚を大きく拡大する働きをする」「ある空間は、われわれにとって熟知したものに感じられるときには、その空間は場所になっているのである」「文学がもつ一つの機能は、場所の経験をも含めて親密な経験に可視…

仕事としての学問 仕事としての政治

「学問に従事する人が、実際に、人生において一度のことで、おそらく二度目はないような、あとに遺るものをやり遂げた、という完全なる感情をわがものにできるのは、厳密な専門化によってのみです」「学問上の「達成」は、どれも新たな「問いを出す」ことで…

明治東京風俗語事典

「かしぼんや〔貸本屋〕:今日の貸本屋とちがい、明治中頃までの貸本屋は、自分でしょって得意先を廻った。これが廃れたのは、ボール表紙の洋装が出来、背負って歩くに不便となったからで、封切(新刊本)は特別料金で汚さぬよう読ませ、お宅へ一番最初に持…

自分と向き合う「知」の方法

自分のことを棚上げしないで物事を考えてみる。「生命を考えるとは、いまここで生命として生きている私について考えることでもある。だから、いまここで生きている私が、社会と自然環境のなかでどのような姿で生きているのか、そしてこれからどのように生き…

図書館の明日をひらく

図書館ははじめるものである。決して図書館をつくるとは言わない。建物をつくれば図書館が完成するわけではない。「私たちが求めているのは、たしかに目に見えるかたちでの図書館だが、ほんとうは私たちの暮らしの隣にあって、役に立つ図書館サービスを手に…

それは「情報」ではない。

「情報の分類は、情報の内容と同程度に重要だ。情報を見つけ出し、ふるいにかけ、並べ替え、分類し、印象づけさせることは、情報を作り出すよりも重要な作業だ」「理解するための、もっとも基本的な必須条件は、何かわからないことが出てきたとき、それを認…

写真論

「写真を収集するということは世界を収集することである」「写真を撮るということは、写真に撮られるものを自分のものにするということである」「撮影することは重要性を授けることである」「写真は、過去を消費できる対象物に変える近道である」「写真家は…

孤独になったアインシュタイン

「紙型雑誌は「研究交換」と「分野を繋ぐ」という二つの機能を持っていたが、後者の機能が失われつつある。まずコピー時代以前には雑誌という現物が多数必要だったが、コピーが容易になると教室に一冊あればよくなった。研究室から雑誌現物が姿を消して、同…

「本をつくる」という仕事

「編集者と同時に校閲部員もまた、作家の原稿を最初に読む読者であり、重い責任がある。しかも世の中に原稿を送り出す側にいる編集者に対して、校閲部員は読者の側に立って原稿を読むという重大な役割を担っているのだ。/誰もが真剣に作品を世に送り出そう…

文盲と読書の社会史

「文盲者が読んだり、書いたりすることができないのは確かである。しかし、文盲者にその力がないとしても、自分の生きている時代の文化には、受容の面でも創造の面でも、充分に参加することができるし、しかも、その参加の手段が、歌謡、伝説、昔話などの民…

書物の記号論

「書物にはいろいろな読者がありうる。ある読者は読んだことをすぐに忘れるが、他の読者は書物の実質を完全に“マスター”し、書物が彼の意識と合体し、それを改造してしまう。しかしながら、こういう意識変化をもたらすには、情報の受け手に努力が要求される…

知識欲の誕生

「彼にとって読書は、快楽にはほとんど結びつかない嫌気がさすような機械的作業ではなくなっていた。彼は概ねまともなフランス語で文章を書くことができた。彼の心的世界は、学校で使用したり図書館で借りたりする読み物によって拡大した。フランスの地理や…

銀河の片隅で科学夜話

「人間は社会的動物なので、生きていく上で自分の社会の中での評判というのを絶えず気にせざるを得ない。集団の中での各人の発言の重みは、評判に従って決まっている。/しかし世評というのはどのように決まっているのだろうか。/なぜ彼女はあんな有能で良…

子どもと本の世界に生きて

「書物のない家庭は、窓のない家のようなものです。なぜなら、本というものは、それを通して、子どもが、知識と経験のより広い世界をのぞき見ることのできるもっとも重要な手段だからです」。子どものことを知る。子どもの本を知る。子どもと本を結ぶ方法を…

パブリッシュ・オア・ペリッシュ

「一般の人びとを科学の不正行為から守ることは、ちょうど公衆衛生のひとつの側面である。水質や食品の安全性をチェックする機関と同様に、知識や情報の質、そしてその安全性をチェックするシステムが、常に機能するよう組織されていなければならない」「一…

本で床は抜けるのか

本は読みきれないけれどもつい買ってしまう。積んでしまう。家に本がたまる。管理しきれなくなった本が本棚をはみ出して床に積み上げられる。生活空間が狭くなる。そして床が抜けそうになる。大量の本はたとえば地震がくると崩れてしまう。東日本大震災のと…

文化史とは何か

「文化の観念は、伝統の観念、すなわち、ある世代からつぎの世代へと継承されてきたある種の知識や技術を含んでいる」。しかし、その伝統の観念には注意しておかねばならないことがある。一つは「目に見える革新がおこなわれると、底流に存在する伝統を覆い…

ディズニーと動物

「初期のウォルト・ディズニーのアニメーションでは、少女、子ども、動物、非生物、機械という、「人間」を規定してきた西欧の進化をめぐる歴史の物語において周縁的/撹乱的な位置を占めてきたものたち、いわば、理性的で合理的な文明社会の陰画としての死…

未来の図書館のために

「みんなをあんまり賢くしてもらうと困るんだよなあ」「そうです。国民が賢くなると困る政治家がいるのです。そうして図書館は、みんなが力を合わせて賢くなるためにあるのです。みんなで図書館を使い、図書館を守ってください。お願いします。そうして、み…