毎日の図書館学

初めて図書館学に触れる学部1年生を想定して図書館に関係ありそうな本を毎日1冊ずつ300字程度で紹介します。

2021-02-01から1ヶ月間の記事一覧

書き換えられた聖書

「人間である書紀が聖書のテキストを複製し、改竄したのと同様、元来のテキストそのものもまた人間である著者が書いたのだ。これは徹頭徹尾、「人の書」なのだ。それぞれ異なる人間の著者が、それぞれ異なる時代に、異なる場所で、異なる目的のために書いた…

日和下駄

「路地はいかに精密なる東京市の地図にも決して明には描き出されていない。どこから這入って何処へ抜けられるか、或は何処へも抜けられず行止りになっているものか否か、それは蓋し其の路地に住んで始めて判然するので、一度や二度通り抜けた位では容易に判…

「民都」大阪対「帝都」東京

「近代国家の形成と協働して敷設されていった鉄道は、中央集権化のメディア(人間の行為や経験の構造を変容させる技術的装置)である」「このようなメディアとして鉄道が意識されたのは、決して日本だけではなかった。鉄道の先進国であったヨーロッパ諸国に…

パンデミック下の書店と教室

「みずからの欲望に気づく、いわば欲望をインプットされるためには、膨大な言葉の中に浸ることが必要なのです。インプットされるのは「情報」だけではありません。人間の感覚は自分が思っている以上に優れ、感情が捕まえる世界は思いもかけず豊饒です。「思…

東京の地霊

東京・上野にある上野恩賜公園に目を向ける。国際子ども図書館のほか、東京国立博物館、国立西洋美術館、国立科学博物館、東京都美術館、東京文化会館、上野の森美術館、上野動物園、東京藝術大学など、多くの文化施設が建ち並ぶ。元は江戸城の鬼門を鎮護す…

博覧会の政治学

「ある生物を記述することは、その器官がいかなるものであるのかを述べるというだけでなく、それが登場する伝説や物語、それについて古代人が語ったこと、旅人が話したことなどすべてを同時に記述していくことだったのである」「自然とは、まぎれもなく一個…

本屋風情

「私はこの辞典の編纂が進むにつれ、世間でこの辞典を、先生の発意でなされたと思われては困る。そしてこの辞典の普及の仕方によっては、先生畢生のお仕事だろうと思われはすまいか、それは更に困る」。博文館『辞苑』が世に生み出され、岩波書店『広辞苑』…

西洋の書物工房

「私は本に携わる多くの人が、「物」としての本に、あまりにも無関心だと考えている。たとえば、司書の資格を持ち図書館で働く人たち。普通、彼らは本についてよく知っていると思われている。しかし、彼らに「モロッコ革」とはどんな革なのか、「マーブル紙…

見るということ

「黎明期において、写真は新たな技術的可能性を切り開いた。写真は道具であった。現在、写真は新たな選択の可能性を提供する代わりに、写真の使用方法や読解が習慣的なものとなり、吟味されることなく近代的な知覚そのものの一部となっている。こうした変化…

金魚と日本人

金魚を眺めて楽しむ文化が江戸時代に広まる。「江戸時代の文芸に金魚が登場する最も古い場面は、俳諧、芝居の台本、それから読本(小説)などである」「江戸時代も中期に近づくと、文芸、絵画、そのほかに、にわかに金魚についての資料が増えてくる」「金魚…

図書館は訴える

「館としてのポリシーのもとに整理したものをピシッと図書館が整えた場合に、利用者はどういう反応をするか。そこでほんとうの図書館と利用者のやりとりみたいなものがあると思います」「図書館として、ボリュームとしての知を流通するだけでなく、知の作業…

イメージを読む

「絵を見るという行為は、いつでも、作者の見た目で、世界を見るという行為です。また、見る人間もそこに参加します。そうして、今度は自分の目でそのイメージから自分の意味をひき出すのです。そこにはいつでもさまざまな体験や感情や経験をもった人間のコ…

ナラティブ・メディスン

人間は時間の流れを物語によって評価する(時間性)。物語化を通して語られるまで存在していなかったものが目に見えるようになる(個別性)。筋書きは私たちが意味を見出すことを可能にし、そこに滞在することをも可能にする(因果性/偶有性)。ある人とほ…

交易する人間

「有用性がゼロであるものが生活の必需品以上の存在価値をもつようになったものを、象徴的事物(財)と呼ぶ。それはときに神聖さをおびるまでになる。物それ自体にそうなる要素はまったくないのだから、物を象徴的な価値へと上昇させるのは、人々の想像力で…

猫の大虐殺

「もし私たちが読書の何たるかを本当に理解し、ページに印刷された小さな記号からどうやって意味を読みとるかが分かるとしたら、私たちは、人間が文化によって周囲に織りなした象徴の世界にどうやって適応していくかという、より深い謎を解きはじめることが…

アイデンティティが人を殺す

「さまざまな考え方の素晴らしい混淆からは、全会一致的な単純きわまりない意見、知的にはたいしたことのない共通分母的なものしか生まれないというのです」「メディアについても、同じような不満を表明することができるでしょう。これほど多くの新聞、ラジ…

歌う国民

「皆で声を揃えて合唱するという行為は、人々に連帯感を生み出し、維持してゆく上で絶大な効果を発揮します。スポーツの競技会などで、国家や校歌を皆で歌うことによって、自分がそのコミュニティに帰属する一員であることを最も強く意識するというような体…

アインシュタイン・ショック

「いったい外国を旅する者が日毎の日記をつける意味は何なのだろうか?/一つは備忘録、忘れてしまう細々とした観察対象のあれこれをメモする目的である。後でそのたびの印象を反芻するために、あるいはその記録を纏めて何かの形で発表するために。/もう一…

図書館の発見

「図書館の本質は、資料、情報を求める人びとに、早く、確実に、求める資料、情報を提供するものであるという前提は、これからも変わらない」「そうして現代ますます重要な問題になっているのは、さまざまな情報をどう選択し、それをどう解釈し、どう生かす…

西洋書物学事始め

昔の書物の生産流通とワイン作りに共通するものが二つあるらしい。それはプレスと樽の使用である。「プレスは写本時代には製本用だけであったが、印刷時代になると印刷および製本の両方に用いられた。とりわけ上から圧縮して印刷する方法が、熟した葡萄に圧…

東京ハイカラ散歩

「着古した破れ外套のポケットに黄色の鉛筆一本と、小さな手帳、それに一冊の新東京地図というのをしのばせた。これがすべてである。履き馴れた日和下駄に蝙蝠傘というあの三十六年前の『日和下駄』の雅士とはくらぶべくもない私の心と姿である。古きものは…

カンマの女王

「よい書き手は、自分の書き方で書く理由をちゃんと持っているものなので、彼らの文章をいじくって、癖のある語法を無難なものに変えたり、カンマを入れたり、書き手がわざとぼやかした部分をはっきりとさせたりするのは、よけいなお世話だ。わたしの経験で…

鉄道が変えた社寺参詣

「お伊勢へ特急!! 正月中大割引 大型ローマンスカー 三輛乃至六輛を連結 車内の暖房装置 あたゝかいこと春の如く 便所もあり煙草も御自由 雑煮券進呈 三十一日夜十時から元旦午前六時まで 参宮御乗客に列車内でお雑煮券を呈上、宇治山田直営食堂で差上げま…

刑務所図書館の人びと

「本を貸すということは、他者とじかに触れあうことでもある。受刑者どうし、ときには受刑者と職員が、相手に読んでほしい本を書き出して交換することもある」。本を介して思いを伝える。誰かの思いを感じ取る。「図書室にやってくる者はみな、何かをさがし…

学校図書館はカラフルな学びの場

どうしたら「いつでもどうぞ」の空気が醸し出せるか、という問いを投げかける。そのためには「生徒と教職員の一人ひとりに学校図書館を使う権利がある、その権利を守るという学校司書のポリシーが必須だ。つぎに、学校図書館がすべての来館者にとって居心地…

敵対する思想の自由

「アメリカの報道機関は、合衆国最高裁による修正第一条の解釈によって、並々ならぬ自由を与えられてきた。そのかわりに、報道機関には社会に対して勇気を与える義務がある。そのためには、権力への従順という誘惑に打ち勝たなくてはならない」「自由な社会…

失われた感覚を求めて

「編集やメディアの役割は、よく誤解されがちなのだが、「発信」ではない。くり返すが、あくまでも「媒介」である。自分発信に走ればかえって主体は遠ざかる。自力で全てを動かしてやろう、そういう自意識ほど自然からはるか遠い行為はない。編集者的身体と…

その島のひとたちは、ひとの話をきかない

「人間関係は、疎で多。緊密だと人間関係は少なくなる」「人間関係は、ゆるやかな紐帯」「問題が起こらないように監視するのではなく、問題が起こるもんだと思って起こった問題をいっしょに考えて解決するために組織がある」「できることは助ける。できない…