毎日の図書館学

初めて図書館学に触れる学部1年生を想定して図書館に関係ありそうな本を毎日1冊ずつ300字程度で紹介します。

2020-08-01から1ヶ月間の記事一覧

わたしたちのウェルビーイングをつくりあうために

人の心が満足する状態にあるってどういうことだろう。わたしの心が満足する。わたしにとっての居心地の良さ。わたしが満足する暮らし。わたし個人としての幸福を考える。けれども「わたし」というのはわたし一人だけではない。いろんな人たちがいて世界はつ…

紙の世界史

紙が当たり前のように溢れている世の中になっている。その長い歴史を辿っていく。 基本となるのは「テクノロジーが社会を変えるのではなく、社会のほうが、社会のなかで起こる変化に対応するためにテクノロジーを発展させている」という考え方である。私たち…

カメラ・オブスキュラの時代

映像には三つの意味がある。頭の中に思い浮かぶイメージ。光線の屈折や反射による物体の像リフレクション。テレビや映画の画像ピクチュア。旧石器時代から中世ルネサンス期まではイメージの時代、ルネサンス期以降19世紀までがリフレクションの時代、その後…

記憶する体

私たちの体にはローカル・ルールがある。自分でしかわからない体のつかい方がある。体をどう動かすのか、あるいは体を動かさないのか。右と左のどちらをつかうのか。どういう姿勢なら安心・安定するのか。それらはさまざまな経験のなかで体に刻まれた記憶で…

バナナの皮はなぜすべるのか?

バナナの皮はすべる。すべるものというように描かれる。こういうすべるイメージで語れるようになったのはなぜなんだろう。この疑問に対してさまざまな資料を駆使してバナナの皮ですべるという事例を調べ上げる。マンガ・映画・文学作品・テレビ番組など、人…

複製技術時代の芸術

「広大な歴史的時間のなかでは、人間の集合体のありかたが変化するにつれて、その知覚様式も変わる」「芸術作品の複製技術は、芸術にたいする大衆の関係を変化させる」。印刷・写真・映像などの技術は「いま・ここに」というオリジナルの芸術作品の持つ一回…

完訳キーワード辞典

私たちがつかっている言葉(英語)の語源から意味の変化を解説する。よくつかわれているはずの言葉はつかう人によって意味が違っている。言葉としては同じはずなのに意味が違っている。そこにはどういう問題がはらんでいるんだろう。私たちが無意識に何気な…

グーテンベルクのふしぎな機械

15世紀半ばにグーテンベルクが活版印刷術を発明する。歴史的な事実として知れ渡っているその一連の流れを絵本で読む。ぼろきれと骨から紙をつくる、ヤギの毛皮から革をつくる、アフリカら運ばれた砂金で金箔をつくる、亜麻仁油とマツヤニからインクをつくる…

本を読むときに何が起きているのか

本を読んで刺激を受けると頭のなかにいろんなことが思い浮かぶ。映像としてはっきりとあるいはぼんやりと。文字を追いながらいろんなことを考える。記憶に残っている。本の内容を理解した。本の内容を理解したつもりになっている。思い浮かんだ自分の頭のな…

マルジナリアでつかまえて

本の余白に何かを書き記す。マルジナリアとは本の余白への書き込みのこと。本の持ち主がその本をどう読んだのかの痕跡。マルジナリアを通して本を読むことを考える。著名人が残した蔵書の書き込み。古本屋で見つかる誰だかよくわからない前の所蔵者の書き込…

三越 誕生!

1904年から1914年(日露戦争開戦から第一次世界大戦開戦)までの三越の歴史をもとに当時の文化を考える。デパートとはさまざまな文化が入り交じる空間である。三越では「学俗協同」という理念が掲げられ、学問・芸術と商売とが融合していく空間となる。デパ…

喫茶店の時代

作家や芸術家たちが作品を生み出していくその背景に喫茶文化・カフェ文化がある。お茶やコーヒーをお店で飲むというのは、単に喉を潤すだけではなく、そこで何らかの時間を過ごすということだ。ほかの誰かと語らうための時間だったり、読書に没頭する時間だ…

図書館に児童室ができた日

「そのころ 子どもたちは、図書館のなかに いれてもらえませんでした。子ども、とくに女の子は、本なんか よまなくてもいい、と かんがえられていたからです」。今日の図書館では児童室を備え、子どもの本を揃え、子どもたちのために読み聞かせをするのは当…

正しい本の読み方

「本」って何か。あるいは「本を読む」ってどういうことなのか。本と読書のことを徹底的に考えてみる。言葉や本は公共的な性格を持っている。その機能を発揮して、本は読者に意味や価値のヒントを提供している。いろんな人たちが本を書き残してきたのはなぜ…

「読む」って、どんなこと?

誰にでも「読む」ことはできる。そのことを「ほんとかな?」と疑ってみる本。私たちは学校でいろんな読み方を習っている。文字さえ覚えたら読むのなんて簡単だと思っている。けれど学校で教わる読み方は「社会」のことばだ。そのことばでは「読めない」もの…

声の文化と文字の文化

私たちが知識を表現する方法には声(口で話して耳で聞く)と文字(手で書いて目で読む)がある。それぞれに歴史も異なれば文化や機能も違う。声でやり取りすることと文字でやり取りすることは私たちの認識や思考法にどんな影響を与えているんだろう。あるい…

在野研究ビギナーズ

教養を高めるためとか余暇を楽しむためとか暇つぶしの時間を過ごすためとか、利用者はそれぞれいろんな目的で図書館をつかっている。そして利用者の楽しみとしての読書だけではなく、何らかの目的を持った調査研究のためにも図書館はつかわれる。研究をして…

本の声を聴け

本の編集ではなく、本棚を編集するというブックディレクターのお仕事。人と本との出会い方を本棚で演出する。本はそれ単体で佇むこともできるけれども、ほとんどの時間を本棚のなかで過ごしている。隣り合った本と本。それぞれの本の魅力がより際立つような…

江戸の読書会

江戸時代の漢文教育には素読・講釈・会読という三つの方法がある。このうち会読は比較的上級者向けの教育方法で、みんなで経典を読み合って意見を闘わせる形式を持っている。車座になって参加者同士で討論を行う読書会である。会読には三つの原理があるとさ…

「勤労青年」の教養文化史

公共図書館は社会教育施設として生涯を通じた学びの空間を提供している。それは人々の「学びたい」という思いや「知的なもの」という教養への憧れによって支えられていることでもある。でもそこには教育格差の問題も絡んでくる。戦後の青年たちの学びや教養…

ひとり空間の都市論

ひとりで過ごす時間は意外と多い。誰かとわいわい過ごすのもいいけれど、ひとりだけで物思いに耽るのも自分にとって大事な時間だ。まちのなかにひとりきりになれる場所ってどのくらいあるんだろう。あるいは自分の部屋はどうだろうか。落ち着いて思う存分ひ…

ワークショップ

みんなと話し合って新しい考え方が生まれ出る。交流による学びと創造の空間。ワークショップってよく耳にする言葉だけれど、どんな風に実践してみたら良いのだろうかとか、それによってどんなメリットがあるのかとかを考えてみる。自分ひとりだけで考えるの…

マクルーハン理論

メディアに関する話題ではマクルーハンの名前と「メディアはメッセージである」というフレーズをよく目にする。メディアの内容だけではなく、その情報を載せているメディアの形式や構造にも注目しないといけない。私たちが受け取っている情報はそれを運んで…

蛾のおっさんと知る衝撃の学校図書館格差

学校図書館は日々学校に通う子どもたちにとってもっとも身近な図書館である。でもその実態は自治体や学校ごとに大きく異なっているのが実情である。学校図書館で働く人や学校図書館で必要な予算がまったく違う。同じ学校で働いている先生たちや自治体の行政…

おやときどきこども

子どもたちは日常的に学校教育を受けている。学校でいろいろな勉強をしている。けれども学びというのは学校だけで行われるものではない。公共図書館は社会教育の一端を担っている機関である。生涯を通じての学びの機会を社会のなかでつくろうとしている。そ…

学問の進歩

図書館では数字やアルファベットなどの記号をつかって本の整理をする。それは私たちの世界を構成しているさまざまな要素を学問分野ごとに認識していくためのツールである。それを分類法と呼ぶ。日本の図書館でつかわれているのは主に「日本十進分類法」で、…

わたしの名前は「本」

パピルス(Papyrus)・羊皮紙(Parchment)・紙(Paper)・印刷機(Printing Press)・ペーパーバック(Paperback)・ページ(Page)・出版社(Publisher)。本にまつわる言葉はPで始まるものが多い。息・文字・粘土板・紙・背表紙・活版印刷機・蒸気機関・…

書物の出現

本はどういった条件のもとに生み出されたんでしょうか。本をつくる技術がどのように進歩してきたのか、本を生産する職人や工房がどのように維持されてきたのか。本は商品もであるわけなので、それを生業として営利目的で仕事にしている人たちも出てくる。本…

不便益のススメ

不便だ不便だ不便だ。不便なことは良くないことだからもっと便利なものがほしい、とつい思ってしまう。でも不便なものにも益するところがある。不便だからこそ自分でちゃんと解決策を考える。不便だからこそ見えてくるものもある。あえて遠回りしてみると気…

思考の取引

書物ってなんだろうってことを考える。人の手から別の人の手へと書物が渡っていく。絶えず新しい書物が生みだされる理由ってなんだろう。書物はなにを伝えようとしているんだろう。書物が動かしているものはなんだろう。書物に関わるってどういうことなんだ…