毎日の図書館学

初めて図書館学に触れる学部1年生を想定して図書館に関係ありそうな本を毎日1冊ずつ300字程度で紹介します。

2021-01-01から1ヶ月間の記事一覧

病院図書館の世界

病院のなかにも図書館がある。病院図書館の仕事とはどのようなものなのか。その立ち上げからサービス内容の変遷の歴史をたどる。一般に病院図書館は小規模であり、病院の関係者が欲する情報に特化して資料が整理される。病院図書館の利用者には病院のスタッ…

読む文化をハックする

「読む文化を育てる教師は、同時に健全な民主主義を育てていることにもなります。つまり、その教師が教えている読書家の生徒たちは、興味を惹く問題に関する情報を、本を通して得ることができる未来の有権者たちなのです」「読むことは、恐れたり決断を迫ら…

自分のなかに歴史をよむ

「私たちは現在に生きていながら、私たちの振る舞いや使っていることばその他のなかに、数えきれないほどの過去がしのびこんでいることに気付くのです」。記念日・事件・祭礼・年中行事などは過去を現在に引き戻そうとするものである。ありふれたことばも過…

暗黙知の次元

「私たちはある程度、すべての知識を、それを知る過程で、形成していく。こうした考えは、知を観察者の気まぐれに委ねてしまうもののように思われる。しかし科学的探求を検証することによって私たちが知ったのは、認識者が自分の予感を形作るときですら、非…

シャボテン幻想

「人間は、──この地上に新しく現れた不思議な生きものは、じつは、動物やその他の生物とちがって、その一人でもが、この世に生きて、たれて、死んだあと、何ものも遺さない、ということはない。どこかの陋巷の、どんな身寄りのない貧しい老人でも、生きて働…

まちの保育園を知っていますか

まちの保育園が目指す三つの力とは何か。一つ目が子どもの力(子どもには能動的に学ぶ力がある)。二つ目が対話の力(答えを急ぐのではなく問いを社会の真ん中に置く)。三つ目がコミュニティの力(子どもを理解するときにあらゆる人の価値観・感覚・視点か…

私の植物散歩

野田宇太郎が文学散歩という楽しみ方を確立する。街の中に点在する文学ゆかりの場所を訪ね歩く。作家の生家や暮らした家。最期まで住んだ家。作家が訪れた場所。また、文学作品に描かれた街を訪ね歩くという方法もある。前田愛は文学作品に書き残された風景…

同性愛と異性愛

「異性愛者であれば、何も言わなくても、あるがままで異性愛者でいられる。異性愛は、どこにでも存在し、この社会のほとんどのことを枠づけているが、それはあまり自覚されていない。社会制度、教育、生活、職場、家庭など、ほとんどのものが異性愛的である…

岩波茂雄と出版文化

「人について、ぼくらにできるのは、当面、模索である。非礼、またあえてしなくてはならぬ。何のために?──人間の価値をつくってゆくために、不自由で、しかし自由でもある、その仕事のために」「岩波文化は、東京帝大教授や京都帝大教授の著作を出版すると…

向こう半分の人々の暮らし

「実は貧困状態は、庭の敷地に生える雑草のように自然とテネメントでは増えていく。犯罪のように、精神の病気はそこでもっとも豊かな土壌を見出す。テネメントハウスの生活環境すべてがその成長に好都合であり、ひとたび根付いたら、駆逐するのはもっともた…

溺れるものと救われるもの

「私たちには、若者と話すことがますます困難になっている。私たちはそれを義務であると同時に、危険としてもとらえている。時代錯誤と見られる危険、話を聞いてもらえない危険である。私たちは耳を傾けてもらわなければならない。個人的な経験の枠を越えて…

ぼくらの時代の本

「ぼくらの時代の本とは形のある本だ」「ぼくらの時代の本とは形のない本だ」「ぼくらの時代の本とはその両方を行き来する本だ。物質からデジタルへ、切り替え可能」「ぼくらの時代の本はきちんと編集され、磨きがかけられ、仕上がった原稿として出版される…

身体としての書物

「本と自分との関係はもっと多様なものでなければならないし、本来そこには誰にとってもより自由で豊かで創造的な、柔軟性にみちた関係があったのだと思います。そしてそのときの「本」とは、われわれが書店などで日常的に目にするいわゆる本でなくてもいい…

〈英国紳士〉の生態学

1881年の英国で、すべての子供が無料で小学校教育を受けらえるように法律が変わる。すべての国民の読み書き能力が向上する。教育制度が変われば読者の数と質も変わり、ロウアー・ミドル・クラス向けの雑誌や新聞も誕生する。「教育がいきわたり、どの階級で…

考現学入門

「私たち同志の現代風俗あるいは現代世相研究にたいしてとりつつある態度および方法、そしてその仕事全体を、私たちは「考現学」と称している」「われわれは世間にたいしては、羨望も同情もいわゆる世間並みの形式ではもっていない場からみる。動物学者や植…

百貨店の展覧会

「百貨店が種々の大催物を行うのは顧客誘致だけが目的ではない。百貨店は他の小売業と異なり文化的使命を有している、つまりここに近代生活に於ける百貨店存在の意義がある。日本では図書館、美術館、博物館等の、知識的、趣味的文化設備が不十分であり、こ…

読書する女たち

「本の再読はとりわけ隠れているものを露わにする行為だ。再読にはかつての自分を呼び覚ます力があり、いくらか魔術の要素があるようだ」「このように時をおいてまた同じ本に戻ることで、愛についての自分の考えがどう変わったかだけでなく、どうして変わっ…

日本印刷文化史

日本における印刷文化の歴史について、古代・中世・近世・近代・現代の時代区分から考える。技術から見た印刷、出版の形から見た印刷、産業文化としての印刷、社会史として捉えた印刷というように、多様な観点から印刷の特徴を考えている。印刷技術が誕生す…

イン

イギリスの宿屋の話。宿屋の機能はただ寝泊まりのためではない。人が通り過ぎる場所ではない。よそから人がやってきては地元の人と交流する。人が集まってお酒を飲んで語らう社交場にもなる。酔いどれ。政治談義の空間にもなる。本が出れば出版祝賀会も行わ…

悲しみとともにどう生きるか

「子どものための芸術というものはない。芸術はすべての人のものである。子どものための絵本というものはない。絵本はすべての人のためのものである」「居場所というのは、弱点を預けることができる場所のことです。油断して、誰かに依存できる場所だといえ…

共通感覚論

「現在ひとは、なにごとにつけても自分で憶えていようとせず、機械にまかせようとする。/こうしたことは人間に見られる〈記憶の外化〉の趨勢のあらわれでもあるだろう」「機械に委ねられないような種類の記憶力をも、記憶の外化とともに私たちが衰弱させて…

満鉄全史

夏目漱石が「満韓ところどころ」という紀行文のなかで「南満鉄道会社っていったい何をするんだい」と書いている。南満州鉄道株式会社は国策会社として鉄道以外のさまざまな事業にも関わっている。大連港の拡充・倉庫業・電気ガス事業・ホテル事業・調査研究…

教育は何を評価してきたのか

教育について語る際に注目されてきた言葉がある。それぞれの時代のなかで都合よくつかわれてきた言葉がある。特に「能力・態度・資質」という三つのキーワードは頻繁に用いられている。何気なくつかっていて、ありふれた言葉のように思えるこれらの用語は何…

書物とともに

「書物とは何か?」を問う。「それは、人間の行為や、知識や、便宜や、必要や、信仰や、思想や、失敗や、成功や、希望や、想像や、悲しみや、歓びや、憧れなどを、さまざまの形式に盛って、何らかの物質的な材料に頼りつつ、表現したものである」「本とは、…

電子図書館

電子図書館の過去から現在と未来の姿を考える。1994年に出た本の新装版(2010年)のまえがきは「発展過程には二つのステージがある」から始まる。一つ目は、図書館にある資料のデジタル化とそのデータの提供(従来の図書館機能の電子化)の話である。二つ目…

民主主義とは何か

図書館を語るときに「図書館は民主主義を守る最後の砦」「図書館は民主主義の柱」などと言われることがある。映画『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』『パブリック 図書館の奇跡』でもこれらの台詞は登場する。民主主義は図書館のあり方にも関係す…

春宵十話

「頭で学問をするものだという一般の観念に対して、私は本当は情緒が中心になっているといいたい」「すべて成熟は早すぎるよりも遅すぎるほうがよい」「人の心を知らなければ、物事をやる場合、緻密さがなく粗雑になる」。学問をするときには人に対する気持…

生きものとは何か

「教育という行為自体も、前の世代が築き上げた生き続ける知恵を次の世代に渡して次世代がよく生きていけるようにする行為であり、これはそっくりにリニューアルしながら存続するという生物としての価値に裏打ちされた行為と言えよう。そして今の世代がこう…

駅をデザインする

「パブリックデザインで最も重要なコンセプトは、“普遍性”universalityという価値観だ」「誰にでもあてはまる可能性が高い」「パブリックを対象にデザインすることだから、共通の場にいる人々が、自由に気持ちよく過ごせるように、また誰一人としてサービス…

社会を知るためには

「私たちは、「知っていること」に影響されるよりも、ずっと大きな影響を「知らないこと」「意図していなかったこと」、さらには「予想外の出来事」によっても絶えず受けているともいえる」「社会を構成するさまざまな要素は、きちんとしたかたちでつながっ…