毎日の図書館学

初めて図書館学に触れる学部1年生を想定して図書館に関係ありそうな本を毎日1冊ずつ300字程度で紹介します。

2020-01-01から1年間の記事一覧

料理と利他

東京工業大学未来の人類研究センターの利他プロジェクトの対談記録。土井さんが河井寛次郎記念館で家庭料理のなかに美しい世界があることに気づくというエピソードからは、文化情報資源をアーカイブして展示する空間をつくることが、巡り巡って誰かの考え方…

流言のメディア史

「日常生活における私たちの行動はほとんど身の回りで耳にするあいまい情報に基づいて決定されている。しかし、それで生活に不都合をきたすことは少ない。私たちの自由はそうした不確実な情報環境の上に成り立っている。さらに言えば、あいまい情報によって…

あるあるデザイン

小粋で気の利いたおしゃれなぱっと見でみんなの興味を惹くような趣のある分かりやすくて言いたいことが伝わりやすいシンプルでインパクトのあるデザインをしてみたい。図書館ではイベントのポスターや広報のためのチラシをつくることがとても多い。適当に文…

学びとは何か

「知識は断片的な事実の寄せ集めではなく、システムである。子どもは語彙という巨大なシステムを、そのしくみを発見しながら自分の力で創り上げていく。知識はつねにダイナミックに変化し、生き物のように成長し、今ある知識が新しい知識を創造していく」。…

「流域地図」の作り方

「人間が言葉を習得していくにはふたつのプロセスがある。ひとつが幼いころからその環境に浸かっていること。もうひとつが、反復訓練し習得していく方法だ。母語は前者での、大人になってから身につける外国語は後者での習得になる。私は、人間が自然とのつ…

肖像のなかの権力

肖像というメディアが私たちの意識に訴えかけてくるものは大きい。肖像に触れることで私たちはそこからいろいろなことを読み取ってしまう。写真技術や印刷技術が私たちの生活を大きく変えていく。大きく写された顔。女性の美しさと男性の力強さ。雑誌の表紙…

なぜ、横浜中華街に人が集まるのか

「町は誕生した瞬間から、衰退に向かって走っているものであって、けっして発展するものではないのだ」。横浜中華街に人が集まることの背景にどういう考え方が反映されているのだろうか。私たちが横浜中華街に行きたいと思っているその向こう側には、横浜中…

ヨーロッパの昔話

「語り手は数人の人物から物語を聞くと、こんどは自分である最高の形にまでその物語を高めようとつとめるものだが、それと同様に採集者や編集者にとっては、いくつもの版を比較することによってほとんど自然に生まれてくる理想的な形を構成しようとするのは…

「きめ方」の論理

「社会における正しい決定というのは、ひとりひとりが自らのうちに「社会の眼」をもつことによってのみなしうるということである。利益を主張するつっぱり合いではなく、この社会を、この世界を「わたしたち」がどうするかという観点で自らの意見を表明し、…

イメージ

「人間は常にその人が生きて、住みついているメディア環境に支配されている。新しいメディアはただ利便性をもたらすだけでなく、人間社会の個々の相互関係を本質的に変えてしまう力を持つ。すべての人々はその時代特有の社会や集団のメディア構造の中で生き…

語りえぬものを語る

「言語にはさまざまな働きがあるが、その中の重要なものは、ものごとを表現するという働きである」「知識であるためには、どういうルートでそれを知るようになったのかということが決定的に重要だ」「知識を獲得するルートは、人から教えてもらったり、本か…

大衆の反逆

「人間の行うほとんどすべてのことにも言えるが、話すということは、普通考えられているよりも遥かに幻想的な作業である」「人は話そうとするとき、自分の考えていることをすべて表現できるはずだと信じているからこそ話す。もちろんこれは幻想なのだ」「真…

はじめての哲学的思考

哲学的な思考法を知るための本。ものごとを考える際には哲学的思考という道具を持っていたほうがいい。そもそも哲学は宗教や科学とはどう違うんだろうか。哲学的に考えるための他者との議論の仕方や、陥らないほうがいい論法についても学んでおきたい。でき…

はじめての編集

編集とは「企画を立て、人を集めて、モノをつくる」こと。そして編集物は「言葉、イメージ、デザイン」から成り立っている。良い言葉を紡ぎ出すためには読書の質を保たなかければならない。書くために読む。良いイメージを生み出すためには豊かなアーカイブ…

ふつう

「デザインは、人間が犯してきた事の反省の要素も含んでいるという事を、初めて感じた。技術の進化やデザインの革新は、必ずしも常に正しいものではないという気がした。今は、少し立ち止まって、何がよかったのか、何が誤りだったのかを感じ取っている時代…

ホモ・ルーデンス

「昔の共同体は世界救済の保証に役立つような聖なる行事、つまり、潔め、犠牲、秘儀などを、言葉の最も直接的な意味において純粋な遊びの中で行なった。神話や祭礼儀式の中に文化生活の偉大な活動、たとえば、法と秩序、商業と利益、技術と芸術、詩、知識と…

カール・クラウス

「論争するにせよ、風刺するにせよ、批判するにせよ、彼は好んでちょっとした一語を手がかりとした。相手が何の気なしに用いた一語、思わず口にした一語、あるいは逆に、意識してはさみこんだ一語、意味ありげに洩らした一語、力をこめて飾り立てた一フレー…

エクソフォニー

「辞書はときに言葉をイデオロギーから解放する役割を果たす。辞書は秩序正しく言葉を整理したもののように見えるが、実はアナーキーな機関なのだ。逆引き辞書などというものも、意味の似たものが集まることもあれば、無関係なものが集まることもあり、全く…

コミュニティ

コミュニティという言葉にはなんとなく良い意味が含まれていると感じられる。コミュニティに参加することは良いことだ。コミュニティは温かい場所であり、居心地が良くて快適だ。構成メンバー同士が尊重し合うこともできる。お互いの善意も期待できる。しか…

独学のすすめ

「読書というのは、他人の経験を共有することだ」「べつな言い方をすれば、読書とは他人の経験を正々堂々と盗む、ということである。読書家とは、経験の大盗人のことである。そして人間は、他人の経験を貪欲に盗むことによって成長する」。本を読むことで私…

いまはまだない仕事にやがてつく君たちへ

「誰かをしあわせにしたいと考えることは、じぶんだったらどうされたらしあわせかを想像することです。そしてそのためには相手に感情移入するための手がかりや情報が必要です。そしてそれを編集する力は経験や人への興味によってしか培われません」。自分の…

戦地の図書館

兵隊文庫。戦場に本が送られる。戦地で戦っている兵隊のために本が送られる。戦地にいても人は本を読みたいと思う。本を読む環境を整えることは、武器や食料を供給するのと同じくらい大事なことだ。図書館や出版社もその取り組みに協力する。戦地ではどんな…

エデュケーション

「その決断は、変化を遂げた人間、新しい自己による選択だったのだ。これを何と呼んでくれてもかまわない。変身。変形。偽り。裏切りと呼ぶ人もいるだろう。私はこれを教育と呼ぶ」。親の方針で学校に通えない。学びの環境を得られない。出生届すら出されて…

再公営化という選択

公共事業の民営化がさまざまな方面で進んでいる。図書館にも民営化が導入されるようになってからずいぶん時間が経っている。民営化が導入される際にはそれによるメリットが謳われる。けれども民営化という選択があらゆる面で公営より優れているわけではない…

孤独な散歩者の夢想

「一般に真実は、どんな抽象的なものであっても、どんな財よりも尊いとされる。真実がなければ、人は判断力を失う。真実こそが、理性の力となる。人は、真実からどう振る舞うべきか、どうあるべきか、何をすべきか、真の目的を達成するにはどうすればいいの…

ハンズ

「人は、手の動きにさまざまな調整を施したり、工夫をしたりすることもできる。しかし、極端にいえば、手の動きは発話に伴う付属物や道具などではなく、むしろ発話それ自体の一部分なのかもしれない。言葉が私たちの心だけでなく身体にも影響を与えるのと同…

声の文化史

「朗読とは、テキストを表現することではあるが、同じテキストを誰かと全く同じようにイメージすることはできない。テキストを表現したように見えながらも、実は話し手自身を表現しているのである」「話し手は、テキストのイメージを構築するという方向と、…

モアイの白目

目が点になる。目がない。目で物を言う。目から鱗が落ちる。目から鼻へ抜ける。目の色を変える。目という言葉をつかった慣用句がやたらとたくさんあるように思えるのは、それだけ目が大事な器官だからだろう。私たちは目をつかって本を読んでいる。本を読む…

引用と借景

「旧市街はその中心に広場を引用する。広場はその懐に人を引用する。モノを引用する。彫刻を引用する。ローマ、ナボナ広場のベルニーニの彫刻がそのような引用行為の結果であるように。人は広場を借景する。彫刻は広場を借景する。広場は旧市街を借景する。…

股間若衆

まちなかに置かれた彫刻作品にの股間部分は「曖昧模っ糊り」と表現されている。芸術作品はどこからわいせつ物の扱いを受けるのだろうか。その線引の基準はややわかりづらい。葉っぱをつけたような表現にするなどで直接的な表現を回避しているものもある。写…